分身ロボで病室の生徒に遠隔授業

病室の私と教室をつなぐのは分身ロボット―。広島県教委は広島大病院(広島市南区)と連携し、入院中の県立高生がICT(情報通信技術)を活用して遠隔授業を受けられる態勢を整えた。遠隔授業を出席扱いにする場合、文部科学省は教員の同席を原則としてきたが、県教委は全国に先駆けて同席なしでも認定する仕組みを導入。文科省もその後、要件緩和に踏み切った。

県教委の遠隔授業では、高さ23センチのロボット「オリヒメ」が入院中の生徒に代わって教室で過ごす。オリヒメが撮影した授業の様子などの映像や音声は、病室で生徒が持つタブレット端末にリアルタイムで届けられる。

生徒は端末で教室の様子を見聞きできるだけではなく、オリヒメを通じて自分の声を教員やクラスメートに伝えられる。オリヒメに「右を向く」「手を振る」などの動作も指令できる。広島大病院によると、これまでに3人が利用し「級友とつながれてうれしい」「治療を頑張る意欲が湧く」といった声が寄せられたという。

文科省は、高校の遠隔授業を出席認定する場合、生徒に教員が付き添うことを原則としてきた。県教委は、この遠隔授業システムを導入した広島大病院では教員がいなくても出席扱いにできると判断。医師、保護者による定期的な見守り態勢の確保といった条件も定め、11月20日、各高に出席認定するよう通知した。

県教委高校教育指導課は「生徒が少しでも安心して学べる環境を整えた」とする。ただ、インターネット環境の整備や学校と医師との連携が不可欠なため、システム導入は現時点で広島大病院に限定している。

一方、文科省は11月26日、病室での遠隔授業について、教員配置は「必ずしも要しない」との通知を各都道府県教委などに出した。以前から出席の認定要件の緩和を検討していたという。「広島県教委の判断はおそらく全国の教育委員会で初めて。先端技術を使った教育支援として他の地域にも広がってほしい」と期待する。

広島大病院小児科の川口浩史医師(52)によると、県内に高校生対象の病院内学級はない。教員が病室で遠隔授業に付き添うことは現実的には難しく、長期入院する生徒は欠席を続けざるを得ないケースが多い。

同病院の医師らは数年前から、出席の認定要件を緩めるよう県教委に求めてきた。川口医師は「頑張って治療し、退院しても同級生と一緒に進級できないと悲しむ子どもがいた。思い描いていた夢がやっと1輪、2輪咲いた感じだ」と喜ぶ。(久保友美恵)