今回は、「【人件費の約1割】データで見る支払っている健康保険料は適切か」について作成しました。
労働衛生の取組を行うことで、従業員に培われる「技術」「経験」「人間関係」等の財産を、企業が安定して享受するためにご活用ください。

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【人件費の約1割】データで見る支払っている健康保険料は適切か
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今回は、令和2年上半期で得られたデータをもとに、企業が結果的に人件費の1割程度支払っている健康保険料(協会けんぽの一般保険料率は9.58~10.73%)が適切であるかを示させていただきます。

なお、企業が支払う健康保険料も、後期高齢者支援金等にあてられる特定保険料率(3.43%)が国に納められているので、間接的に国民健康保険に影響を受けます。また、国費の充当もあるので、消費税増税の大義名分に使われているともいえます。

〇人口動態統計月報(概数)(令和2年6月分まで)より
日本では、人口動態統計月報(概数)が報告されており、月あたりの死亡数について令和2年と令和元年1月~6月までの人数は、次の様になります。

【令和2年上半期】
1月128,993人、2月115,554人、3月117,979人、4月112,407人、5月107,484人、6月99,551人
上半期累計681,968人

【令和元年上半期】
1月137,787人、2月117,286人、3月118,182人、4月111,894人、5月111,119人、6月101,386人
上半期累計697,654人

従って、令和2年上半期の死亡数は、15,686人の減少となりました。

〇国民健康保険医療費速報(令和2年6月分まで)より
公益社団法人国民健康保険中央会より、国民健康保険・後期高齢者医療 医療費の速報が報告されており、月当たりの国民健康保健医療費は次の様になります。

【令和2年上半期】
1月8,858億円、2月8,546億円、3月8,984億円、4月8,251億円、5月7,630億円、6月8,632億円
上半期累計5兆901億円

【令和元年上半期】
1月8,908億円、2月8,563億円、3月9,186億円、4月9,131億円、5月8,884億円、6月8,896億円
上半期累計5兆3,568億円(確定値5兆3,824億円)

従って、速報値ベースで2,267億円、確定値等ベースで2,923億円の減少となりました。
特に、4月は880億円(9.6%減)、5月は1,254億円(14.1%減)の減少となりました。
補足として、後期高齢者医療費は、令和2年4月1兆3,205億円(対前年同月比6.4%減)、5月1兆2,566億円(対前年同月比9.9%)となっています。

〇短期的観測による結果
令和2年4月と5月は9.6%と14.1%の国民健康保険医療費が減少しました。一方、死亡数は令和2年4月で0.5%増、5月で3.3%減となりました。短期的観測によると、医療費が1割程度下がったにも関わらず、死亡率はほぼ変化ないか微減であったことになります。

もちろん、長期的観測の結果、令和2年4月と5月に医療費が減少したことにより、数ヶ月して死亡数の上昇が認められる可能性はあります。もしくは、医療費が減少したことにより、悪化の予防が十分とならずに、寝たきり等QOLが著しく低下した方が増えた可能性もあります。しかし、もしそういったことが観察できない場合は、行政は医療費を削減する余地があるにもかかわらず、その努力をせずに健康保険料を数千億から数兆円不当に徴収していたことになります。少なくとも、医療費削減に抵抗していたステイクホルダーは、適切な説明を求められていくことになるでしょう。

〇個人の健康管理のプロの構造上の課題
健康保険法で給付が許されている医療費は、疾病が発生した後の治療費に対してであり、予防的観点の場合、三次予防だけになります。また、個人の健康管理のプロの業務は、次のコラムに示すように、「困った」「苦しい」「痛い」等の「不健康の訴え」という診察治療の求めに応じて、対応することが通常業務になります。

【再発防止の提言】個人の健康管理のプロに、不慣れな仕事は危険
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-174865/

従って、個人の健康管理のプロが、国民の「困った」「苦しい」「痛い」等の「不健康の訴え」を減らす一次予防及び二次予防に力を注ぐことや、そのスキルアップをすることはありません(あったとしても趣味の範囲であり、もし趣味を超えて効果を出してしまうと売上が低下することから、売上低下の責任を負うことになります。)。

また、インフルエンザに関するデータとして、インフルエンザ定点当たり報告数・都道府県別によると、次の様な報告数(括弧内は前年同週数)となっています。

2020年36週3人(3,813人)、37週4人(5,738人)、38週4人(5,716人)、39週7人(4,543人)、40週7人(4,889人)、42週20人(3,550人)、43週30人(3,953人)、44週32人(4,682人)、45週24人(5,084人)、46週23人(9,107人)、47週46人(15,390人)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou_00008.html

適切な一次予防を十分に行うと、秋の間はインフルエンザの発生率は1%程度まで減ることも判明しました。しかし、これでは、三次予防だけで稼いでいる個人の健康管理のプロは収入が減少してしまいます。上気道感染症に関して、一般的な予防対策が効果ないと、一部声高に発信していた個人の健康管理のプロがいましたが、一次予防や二次予防の知見が低かったという立証になるかと思います。個人の健康管理のプロは個人の「苦しい」等の訴えが多いほど利益を得ることになってしまいますが、これは、個人の健康管理のプロが悪いわけではなく、法律の構造上、当然といえます。

では、一次予防と二次予防の責任主体はどこになるかというと…

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